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LOWA Footprintsユーザーズボイス: ”アルパインエクスパート”

ユーザーズボイス: ”アルパインエクスパート”

通年での登山、バリエーション、クライミングなど20年にわたり山岳ガイドとして活動し、また登山を学ぶための『高みへ 大人の山岳部』の著者でもある笹倉孝昭氏より”LOWA アルパインエクスパート”についてのインプレッションが届きました。

「LOWA アルパインエクスパートはウインターマウンテンブーツとしての機能を、高次元でバランス良く備えたブーツだ」これが私の率直な感想である。

まずウインターブーツとして不可欠な機能でもある保温性だが、これがかなり優れている。シングルブーツとしてはもっとも優れていると言っても過言ではない。その理由は、通常は一つのみ採用されている断熱材が、アルパインエクスパートには厚手のプリマロフト400と、薄手の適度な断熱性を備えるGORE‑TEX パフォーマンス コンフォートの二つを採用していることにある。さらに、ベロの部分にも断熱材が入っているという特別な構造も、優れた保温性を生み出す理由のひとつになる。

厳冬期の稜線でもアイスクライミングでもこの保温性のおかげで、常に落ち着いて行動できる。足下が冷たいと心理面でも追い詰められ、また、行動も雑になりがちだが、この高い保温性能のおかげで、足元が冷えすぎることなく、精神的な余裕が生まれる。

保温性が高いとフィット感はどうだろうかと思われるかもしれないが、アッパーがごわついているわけではないので、実にぴったりとフィットしてくれる。これはアッパーのしなやかさとスムーズなレーシングシステムの相乗効果から得られるものだろう。私はブーツを履くときに「シューレースを締めるのではなく、シューレースを使ってアッパーを締め込む」ことを意識しているが、アルパインエクスパートはシューレースがアッパーを締め込むツールであるという要素を実現してくれている。

フック内の小さなボールがシューレースの滑らかな動きを可能にしたローラーアイレット

フック内の小さなボールがシューレースの滑らかな動きを可能にしたローラーアイレット

  

またウインターブーツとしてはちょっと特殊とも言えるのだが、トウボックスがやや前方に位置しているので親指がブーツ先端に近い位置に配置することができる。この構造は岩稜でのクライミングやアイスクライミングのときの微妙なフットワークを可能にしてくれる。かといって、つま先が窮屈とか負担に感じるということもない。これは、実際に履いてみて、クライミングしてみないと気づくことはないとても些細なことだが、クライミングの時の安心感という役割としては、非常に大きな効果があると感じている。

撮影:奥田仁一ガイド

撮影 : 奥田仁一ガイド

これだけフィット感が良く、クライミングにも適した性格を備えながら、縦走登山やテント泊にも使えるのもこのブーツの特徴だろう。特にブーツの脱ぎ履きは、「さすがLOWA」と言いたくなるくらい楽に行える。そのため狭いテントでの脱ぎ履きにストレスを感じることもないし、早朝の寒い時間帯の出発時にテントの入り口でブーツを履くときに、余分な力みは不要で、脚が痙りそうになることもない。

このように、にわかには信じがたいがあらゆるポイントで高得点を出すオールラウンドなウインターマウンテンブーツなのだ。しかしながら、このように完成度の高いブーツがLOWAから生まれてきたことには理由がある。それはメーカーが積み重ねてきた歴史を振り返ることで気付かされる。

かつてLOWAチベッタというブーツがあった。私はまだ中学生くらいで、雑誌の記事などでしか知ることはなかったが、とても印象に残っている言葉がある。それは「7000m峰を登れるシングルブーツ」というキャッチコピーだ。LOWAは、今から50年ほども前に、保温性、フィット感、登攀のときのダイレクト感などが揃ったブーツを作っていたのだ。特に保温性能は折り紙付きだった。残念ながら、私自身は憧れのLOWAチベッタを履く機会は得られなかったが、現代のテクノロジーによって作り込まれたアルパインエクスパートを使ってみて、伝統あるLOWAの系譜は見事に引き継がれているのだなと実感している。

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笹倉 孝昭

「しっかりと歩く事」、「落ちずに登ること」、「墜落を確実に止めること」の3つの基本を重視したスクール・ガイディングを実施。著書に『高みへ 大人の山岳部』『アルパインクライミング教本』など。登山ガイド山志(やまさね)に所属し、zoomを使ったオンライン講習の講師も務める。

公益社団法人日本山岳ガイド協会 山岳ガイドステージ2/独立行政法人日本スポーツ振興センター 国立登山研修所 講師

笹倉孝昭インスタグラム
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