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LOWA Footprintsプロハイカーが教えるトレイルに最適な靴選び

プロハイカーが教えるトレイルに最適な靴選び

アメリカのシーニックトレイル(全11トレイル)の全踏破を目指しているプロハイカー、斉藤正史さん。2024年秋にポトマックヘリテージ・トレイルとニューイングランド・トレイルの約722㎞を踏破しました。これまでのトレイル歩きの経験をもとに、靴選びのポイントと、実際に使用したモデルの感想を紹介しています。

僕は、2012年からプロハイカーとして、海外のトレイル、特にアメリカのトレイルを中心に歩いています。一口にトレイルと言ってもその道のりは様々で、砂漠地帯を歩く事もあれば、シエラネバダの山々を歩く事もあります。舗装路やダートロードを歩く事もあるし、時には町の中やハイウエイも歩きます。ハイカーは生活に必要な最小限の荷物を背負い、1日中トレイルを歩き、テントを張って寝てはまた歩く生活を長ければ半年続けることもあります。

どんな天候や状況でも履き続ける靴は、トレイル歩きの最も重要な準備の一つです。トレイルを歩くにあたってどんな靴を選べば良いのかでしょうか。トレイル歩きに万能な靴は存在しないかもしれませんが、地域や歩く期間に応じて最適な靴を選ぶことが大切です。

トレイルごとの靴選びのポイント

今回挑戦したトレイルは、アメリカ連邦政府が指定する11のルートの一つ、ポトマックヘリテージトレイル(約522km)と、2023年に半分を歩いたニューイングランド・トレイルのコネチカット州エリア(約200km)を合わせた、約722kmの道のりでした。このふたつのトレイルは、ある程度の山道もありつつ、自転車と共有する平坦な道も多くあります。そのため、山道向きか平地向きか、どちらの靴を選ぶかが重要なポイントとなりました。地図を見てネットで風景を確認し、道のりをイメージしながら準備を進めました。

トレイルごとの靴選びのポイント

ローバーの選択理由

2020年、僕は日本で2番目に作られた九州自然歩道(約2,100km)をスルーハイク(1年で一気に歩くスタイル)で歩きました。この時選んだのがローバーのイノックス PRO GT MID(現在は廃番)でした。過去の経験から、1,000kmほど歩くと靴の交換が必要になるだろうと予想し、同じ靴を2足準備して出発しました。しかし実際、靴を交換したのは歩き始めて約2ヶ月後、1,600kmを歩いた後でした。予想以上に舗装路が多く、1,600kmを歩いた後は、ソールは摩耗して一部補修しましたが、アッパーや防水性能はしっかりしていました。この耐久性の高さには驚きました。この経験を踏まえ、今回のアメリカのトレイルにもローバーの靴で挑戦したいと考えました。

1600kmを歩いた後のイノックスPRO GT MID
1600kmを歩いた後のイノックスPRO GT MID

平地と山道に合わせた選択

平地を歩く際には、ソールが硬すぎると足への負担が増えますが、山道では逆にソールの硬さが安定感を提供し、足元をしっかり支えることができます。このため、歩く地形に応じた靴の選択が重要です。

今回のトレイルは平地が多いため、ローバーのラインナップから比較的ソールに柔軟性があり、クッション性の高い「イノボ GT」と「レネゲードX GT MID」を選び、実際にフィールドで試してから決めることにしました。

トレイルごとの靴選びのポイント

実際にフィールドを歩いてみる

実際に試す場所として、山形市の白鷹丘陵トレイルを選びました。これは2023年にオープンした約32kmのトレイルです。アメリカのトレイルを想定した歩きができると考え、このコースで実際に試しました。

まず、レネゲードX GT MIDを数日間試してみました。急な登り坂や登山道ではフィット感が良く、全体的に快適に歩けました。ただ、緩やかな下りでは気になりませんが、急な下りになるとソールの硬さを少し感じました。それでも、他の登山靴と比べて柔らかい方だと感じました。岩場や不安定な道では安定感があり、フィールドの状況に応じて必要な靴だと感じました。

実際にフィールドを歩いてみる
実際にフィールドを歩いてみる

そしてイノボ GTも数日間試しました。アスファルトの登りと遊歩道では、ソールのロッカー構造(つま先とかかとの部分がわずかに反り返った形状。歩く際に足の自然な動きをサポートし、歩行時の推進力を助ける)が非常に快適で、足の運びがスムーズでした。急な下りでもアッパー部分がしっかりとフィットし、ぬかるみでも安定感がありました。イノボ GTにはダブルインジェクション技術(ソールに異なる硬さの素材を二重に重ねた構造)が採用されており、足元をしっかり支え、特に急斜面では他の靴よりも快適に歩けました。アスファルトや舗装路での歩きやすさではイノボ GTが優れており、長時間歩いても足への負担が少ないと感じました。

ソールのロッカー構造で自然な方向
ソールのロッカー構造で自然な方向

最終的に選んだ靴

ポトマックヘリテージ・トレイルは自転車との共有ルートが多く、ニューイングランド・トレイルの後半100kmほどは平坦な舗装路ミックスです。食料補給の間隔が短いため、荷物は軽めですが、それでも25kgほどは背負うことになります。そのため、足への衝撃を最小限に抑えることが重要です。

どちらも履き心地の良い靴でしたが、最終的にイノボ GTを選ぶことにしました。長い舗装路やダートロードを歩くことを考えると、ロッカー構造による推進力と足への負担を減らす性能が、今回のトレイルに最適だと判断したからです。もし登山道や急斜面が多いトレイルだったら、レネゲードX GT MIDを選んでいたかもしれません。

トレイルでは、歩く道の特徴や地形によって装備も大きく変わります。自分がどんな道を歩くか、どんな地形を登ることが多いかを考えて靴を選ぶことが、快適なトレイル歩きには大切です。これが参考になり、皆さんの靴選びに役立てば嬉しいです。

実際にトレイルを歩いてみた感想については、次回Footprint『プロハイカーが歩いたイノボGTの実力』をご覧ください。

斉藤 正史

山形県上山市在住

2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。スルーハイク(単年で一気にルートを歩くスタイル)でのトレイル歩きが特徴で、歩いた総距離は22,000kmを超え、地球半周以上の距離を踏破。現在はトレイルカルチャーの普及を目指し、海外のトレイルを歩きながらアウトドア雑誌へ寄稿する傍ら、地元山形にトレイルコースを作る活動を行っている。

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