LOWA Footprintsプロハイカーが歩いたイノボGTの実力

前回の「プロハイカーが教えるトレイルに最適な靴選び」に引き続き、実際にイノボGTを使用した体験を元にその性能と耐久性について紹介しています。
最初の印象と歩き始めてからの変化
渡米後、すぐにイノボGTを履き始めました。最初は靴全体が少し硬く足に馴染むまでに時間がかかるように感じました。特に最初の2日間、ワシントンDCの街中を歩いていたため、アスファルトや石畳の路面の影響もあったと思います。しかし、トレイルに入ってから1週間(100km)ほど歩くと、路面はダートロード中心の登り道に変わり、最初は硬く感じていた靴が、次第に足に馴染み、快適に歩けるようになりました。
イノボGTのアッパーは柔らかく、足の形にフィットさせやすいですが、最初は靴紐の締め具合に慣れておらず、きつく締めるとつま先が窮屈になることは事前に確認していました。厚手の靴下を履くことで対応し、徐々に締め具合を調整していくことで快適に歩けるようになりました。

ポトマックヘリテージ・トレイル
ポトマックヘリテージ・トレイルは、前半410kmがダートロードの登り坂、後半112kmが登山道という明確に分かれたミックスルートでした。前半のダートロード区間では、ソールのロッカー構造(つま先とかかとの反り返り)により、歩行がスムーズになり、次のステップへの推進力が生まれました。足の動きがスムーズで疲れにくく、ロングトレイルの長時間の歩行において、このロッカー構造が特に有効であると実感しました。
後半は登山道が続き、特に岩やごつごつした石で覆われた「ロックロード」が目立ちました。特にペンシルバニア州周辺では足首をひねりやすく、慎重に通過する必要がありました。この時期は紅葉が最盛期を迎えており、落ち葉の下に隠れた岩に注意を払う必要がありました。しかし、イノボGTはソールがよれず、着地が安定しており、足の側面が岩にぶつかるリスクを避けつつ、スムーズに通過することができました。
革製のアッパーは強度も高く、岩にぶつかっても破れを心配することなく安心して歩けました。この体験を通じて、イノボGTがオールラウンダーとして優れた実力を持つことを実感しました。
ポトマックヘリテージ・トレイルを踏破する3日前、山小屋でブーツを保管していた際、リスが靴紐を食いちぎるというハプニングがありました。幸い短いパラコードを持っていたのでそちらで対応しましたが、この出来事は、改めて気を引き締めるきっかけとなりました。自然と共に過ごす生活の中では常に色々なアクシデントに遭遇します。どんな状況にも冷静に判断し、対処するのがハイカーです。

ニューイングランド・トレイル
ニューイングランド・トレイルの後半でも、ロックロードが続き、いくつもの山頂を越えるため、急なアップダウンが加わりました。道の大部分は岩場が続きました。
500kmを超えた頃から、岩場の下りでソールに少し滑りが感じられるようになりました。ソールを確認すると、ソールが少し摩耗している様子でしたが、かなりの急斜面の連続でしたので、この程度の滑り出しかと考えるとソールの耐久性の高さを感じました。
イノボGTの実力と耐久性
今回、イノボGTをトレイルで履いてみて感じたのは、ポトマックヘリテージ・トレイルの前半部分、平地やなだらかなルートでは非常に快適だったということです。特にソールのロッカー構造が効いており、足の運びがスムーズで、歩きやすさが格段に向上しました。また1ヶ月間毎日使用し、走行距離は722kmに達しましたが、ソールに多少のダメージは見られるものの、まだ十分に使用可能な状態です。この点においてもイノボGTの耐久性には大変満足しています。イノボGTは、まさにトレイルに最適な靴だと実感でき、この靴を選んで本当に良かったと思いました。
日本のトレイルは、アスファルトの道が多く、山域に入ると登山道に変わるミックスルートが多いです。どちらのルートでも快適に歩ける靴を探している方には、イノボGTをぜひ試していただきたいと思います。その歩きやすさをきっと実感できるはずです。


斉藤 正史
山形県上山市在住
2012年より日本で唯一のプロハイカーとして活動。スルーハイク(単年で一気にルートを歩くスタイル)でのトレイル歩きが特徴で、歩いた総距離は22,000kmを超え、地球半周以上の距離を踏破。現在はトレイルカルチャーの普及を目指し、海外のトレイルを歩きながらアウトドア雑誌へ寄稿する傍ら、地元山形にトレイルコースを作る活動を行っている。