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赤や黄色に染まった紅葉がきらめく秋の低山ハイキングに出掛けよう
写真・文 西野淑子(アウトドアライター)
秋は低山ハイキングに適した季節。秋の長雨、そして台風のシーズンが過ぎると天候は安定し、気温も下がるので快適に歩くことができます。秋の山歩きの楽しみといえば紅葉。赤や黄色に染まった山に逢いに出掛けましょう。
秋の山は色とりどり、まさに「錦秋」
山の紅葉が楽しみな秋がやってきます。
日本の樹林は、樹相の豊かさが特徴です。さまざまな木々が樹林にあり、秋にはこれらが色づきます。カエデやサクラ、ツツジは赤く、ブナやコナラは黄色く。3000m級の山々の紅葉風景で見られる赤色はナナカマド、黄色はダケカンバ。「赤」といっても一色ではありません。黒みがかった深紅、鮮やかな赤色、ほんのり柔らかな朱色、黄色がかった赤…。さまざまな赤や黄色が山肌を埋めていきます。
低山の針葉樹の林床に見られる、ギザギザの葉を持つ低木はコアジサイ。初夏には淡い青紫色の線香花火のような花を咲かせますが、秋は葉がレモンイエローに染まります。うすぐらい林の中で目を引く存在です。
針葉樹のなかで唯一、紅葉、落葉するのがカラマツ。秋の始めにレモンイエローに葉が染まり、徐々に色を濃くしていき、秋の終わりに落葉します。風の強い日、カラマツの葉が陽光に輝きながら風に舞う様子は、金色の花吹雪のよう。出合えればちょっとしたご褒美をいただいたような気持ちになります。
足元にも小さな秋が潜んでいる
木々を見上げるだけでなく、足元も見てみましょう。ゆっくり歩けばあちこちに木の実も落ちています。どんぐりはいろいろな形をしています。クヌギはまんまる、ベートーベンのフサフサ髪のような帽子をつけています。カシやシイは細長く、頭には小さなベレー帽。松ぼっくりの大きさもさまざまです。
注意深く林床を見つめるとあちこちにキノコの姿も。ちょっと毒々しい色のもの、ゲームのキャラクターを思わせる愛らしい形のものなど、傘の色も形も大きさもさまざまです。ひとつ見つけて目が慣れてくるといくつも目に入ってきます。まあ食べられないよねと言いながら、可愛い形や色のものを探してしまいます。
見頃を迎えた紅葉をめでる、のんびり低山ハイキングへ
紅葉ハイキングは全国各地で楽しめますが、今年は標高の低い、歩行時間短めの山をのんびり楽しむのがおすすめです。紅葉は標高の高いところから低いところへ、徐々に進んでいきます。標高1000m前後の山の紅葉の見頃は例年10月中旬から11月半ばにかけて。500m以下の低山だと、11月から12月上旬ごろまで楽しめるところもあります。
紅葉の美しい時季に訪れたい、私の好きな山は箱根浅間山(神奈川県)です。箱根登山鉄道の小涌谷駅から山頂に向かい、湯坂路を通って箱根湯本駅に下山します。山頂に向かう途中の雑木林が赤や黄色に染まっているのも美しいですが、このルートのハイライトは山頂からの下り路。路沿いのカエデとサクラが真っ赤に染まった中を歩くのは毎回心が躍ります。肌寒くなってくる時期だから、下山後の温泉も楽しみです。
渓谷の紅葉も美しいものです。昼夜に寒暖差があり、適度に湿度のある渓谷は、紅葉が美しくなる条件が揃っています。渓谷沿いの散策路を歩けば、青白く流れる渓流と、赤や黄色の樹林のコントラストを楽しむことができるでしょう。観光客にも人気が高いのは昇仙峡。白い花崗岩の岩峰を赤や黄色に色づいた木々、青々とした針葉樹が彩るさまは、見応えがあります。
歩けば暑く、空気は冷たい、秋の低山ハイキングは防寒がポイント
秋の低山ハイキングで注意をしたいのは体温の調節です。よく晴れた日だと、歩いているときは汗ばむぐらい暑いですが、気温は低いので立ち止まるとうっすら寒くなってきます。汗をかいているぶん、冷えも感じやすくなっていることでしょう。薄手のダウンやフリースのジャケット、ニットのグローブなどの防寒具を持参しましょう。ニットのグローブは朝の歩き始めに、ジャケットは休憩時にさっと羽織って体温の低下を抑えます。バックパックは、防寒具などを行動中は中にしまっておくことが多いので、やや大きめの容量がいいでしょう。
思ったより汗をかいていることも多いので、水分補給も忘れずに。歩きながら少量の水分を摂り続けられるハイドレーションシステムが快適です。
日の当たるぽかぽかとした広場や展望ポイントがあったら、のんびりとティータイム。小さなソロクッカーを持参し、お湯を沸かしてコーヒーやチャイなどを飲むのもよさそうです。
晴れ予報の休みは、仲間を誘ってきらめく山へ
雨の日や霧にけむっている日でも山は美しく、楽しいものです。でも、紅葉の山歩きだけは、晴れているときがいいです。赤や黄色の葉は、日の光を浴びるといっそう色鮮やかになります。樹林を下から見上げたときの、薄い葉から陽光が透ける感じも、重なり合った葉が濃淡を作り出しているのも、素敵です。やわらかな秋の日ざしにきらめく錦秋の山は、冬に向けて、山の最後のきらめきなのかもしれません。
紅葉の低山ハイクは、山歩きのはじめの一歩にピッタリです。赤や黄色にきらめく樹林の中を歩くのも、色づいた山を遠くから眺めるのも、この時期ならではの「ご褒美」。山に縁遠い友人や家族を誘ってみるのもいいですね。
ドイター フューチュラ30SL
背中の通気性が抜群に良く、通年でハイキングに使用しやすい大きさ。日中の寒暖差対策に1枚羽織るジャケットを入れたり、山ご飯の装備を入れたりもできる容量です。
ローバー バディアGT Ws
足運びのしやすいやや柔らかめで、滑りやすい場所でもしっかりとしたグリップ力を発揮するソールのブーツ。紅葉ハイクから本格的にハイキングを楽しみたくなったらお勧めの一足です。
プリムス エッセンシャルトレイルストーブ(P-TRS)
はじめてアウトドアこんろを使う人でも組み立てるようなこともないので、直ぐに使うことのできる軽さと安定感のあるモデル。点火用のライターやマッチを忘れずに。
ソース ワイドパック1.5L
肌寒さを感じる季節だからと水分摂取を敬遠しがちですが、のどの渇きを覚える前の少しずつがコツです。バックパックの内部に吊り下げるように収納して使用しますので、歩きながらの水分補給が可能です。
西野 淑子(にしの としこ)
関東近郊を中心に、低山ハイキングから縦走、雪山登山までオールラウンドに山を楽しむフリーライター。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)、「ゆる山歩き」(東京新聞)など。