IWATANI-PRIMUS イワタニ・プリムス株式会社

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冬の登山は冷たい空気とやわらかな日ざしが心地よい低山ハイキングへ

写真・文 西野淑子(アウトドアライター)

寒くて雪も降るから、冬の山歩きはお休みにするという方が多いのではないでしょうか。そんなのはもったいない。1年を通じて楽しめるのが低山ハイキングの魅力です。冬にしか出合えない「宝物」を求めて、うんと暖かい格好をして山歩きに出掛けましょう。

冬枯れの登山道(埼玉県秩父・長瀞アルプス)

冬枯れの登山道(埼玉県秩父・長瀞アルプス)


空を見て、足元を見て、冬の宝物さがし

冬は日だまり低山ハイキングへ。
標高の高い山は雪に覆われ、厳しい気候で人を寄せ付けない雪と氷の世界になりますが、標高の低い山は冬枯れの山歩きが楽しみ。木々が葉を落とした広葉樹の森をのんびりと歩いてみましょう。

夏は生い茂る葉で覆われていた空がすっきりと見渡せ、青空と木の枝の造り出す模様がちょっと芸術的だな…と思ったりします。木々の間から遠くの山や山麓の集落などが見渡せたりもして、こんな近くに素敵な景色が隠れていたのか、と驚くこともしばしばです。

葉をおとしたカラマツの枝が青空に映える

葉をおとしたカラマツの枝が青空に映える

山の花がドライフラワー状になっているのを探して歩いたりもします。ちょっと形のよいものが見つかると嬉しくなります。記念に持って帰りたいところですが、ザックに入れて歩くうちに粉々になってしまうので、写真に撮り、心にとどめるだけ。

登山道に向かう途中、ドライフラワー状になったたんぽぽの綿毛

登山道に向かう途中、ドライフラワー状になったたんぽぽの綿毛

山の花がドライフラワーになっていた

山の花がドライフラワーになっていた

足元の落ち葉を五感で楽しむ

足元には落ち葉がたんまりと。落ちたばかりの新しい枯れ葉は、踏むといい音がします。サクサク、ザクザク。踏んだときの足の感覚もいいですし、枯れ葉の匂いがふんわりと漂うのもいい感じ。目で見るだけでなく、音を聴いたり匂いをかいだり、触感を楽しんだり。山を五感で楽しんでいる感じですね。とはいえ、落ち葉の下に岩が隠れていることもあるので、深い落ち葉の中を歩くときはちょっとだけ足元に注意して。

うんと寒い日の朝、歩き始めは霜が枯れ葉や草に付いているのを見ることができます。なんとも幻想的な足元の景色、自然が造り出した芸術です。こんな日は、ところどころで霜柱を踏むのも楽しみ。時間が経って気温が上がると霜柱が解け、ドロドロした土は歩きづらくなってしまうので、冬の山も早朝から歩くのが吉、ですね。

枯れ葉に霜がついている早朝の登山道

枯れ葉に霜がついている早朝の登山道

澄んだ空気が見せてくれる冬ならではの山岳景観

冬の山は展望も楽しみです。空気が澄み、晴れていれば遠くの山々もよく見渡せます。富士山は頭に真っ白い雪をかぶり、日本アルプスや八ケ岳など標高3000m級の山々も雪に覆われています。手前の標高の低い山々の背後に、真っ白い山々が屏風のように連なっているさまを見るのも、この時期ならではの楽しみです。

冬になると行きたくなる、私の好きな山は箱根・金時山(神奈川県)です。「富士山の展望台」としても人気の高い山で、山頂から眺める雄大な富士山の姿は、登ってきた苦労を吹き飛ばす素晴らしさです。1年を通じて登れますが、やはり真っ白い富士山が魅力的。さらにこの時期は、富士山の右側に真っ白い南アルプスの山々の連なりも眺められます。冬の関東地方は晴天率が比較的高く、山頂で美しい富士山に出合える確率が高いです。

晩秋の金時山山頂。雪をかぶり、雲をまとった富士山が間近に

晩秋の金時山山頂。雪をかぶり、雲をまとった富士山が間近に

奥多摩・浅間尾根(東京都)の縦走も楽しいです。針葉樹、広葉樹の林から稜線に出て、ところどころで周辺の山々の景色を眺めつつのんびりと。浅間嶺の展望台からは、北側を望めば御前山や大岳山など奥多摩の山々、南側には丹沢の山々が連なり、富士山も見渡せます。浅間尾根登山口から登り始め、払沢の滝に下山すれば、条件に恵まれれば結氷した滝が見られるかもしれません。

浅間尾根・浅間嶺展望台から眺める奥多摩の山々

浅間尾根・浅間嶺展望台から眺める奥多摩の山々

保温ボトルをつかって温かい飲み物でほっこり

冬の低山ハイキング、注意するべきは体温調節と日照時間の短さです。

日照時間が短く、山の陰に太陽が隠れてしまうと一気に山は薄暗くなります。夕方になると暗くて登山道が見えにくくなることも。短時間の山歩きでも早朝出発、早め下山を心がけたいものです。そして必ずヘッドライトを持参しましょう。ちょっと薄暗くて足元が不安になったとき、ライトの明るさはとても心強いものです。

太陽が低い分、登山道が陰るのも早い

太陽が低い分、登山道が陰るのも早い

体を冷やしすぎない、体温調節も大切です。フリースやニットの帽子、ウールの手袋などを身につけて歩き始め、身体が温まってきたと思ったら上着を脱いだり、帽子や手袋を外したり、汗をかきすぎないようにしましょう。

歩いているときは暖かくても、気温は低いので立ち止まると一気に寒くなります。長めの休憩時は1枚上着を羽織るなどして体を冷やさないようにします。体の中から素早く温めるのに有効なのが温かい飲み物。保温ボトルにお茶などを入れておき、休憩時に飲むようにしましょう。今はスティックタイプのコーヒーや紅茶、ココアなどもあるので、必要な分だけのお湯をさっと沸かして好きなものを飲むのもいいと思います。

見晴らしの良いロケーションでひと休みは身も心も和む贅沢時間

見晴らしの良いロケーションでひと休みは身も心も和む贅沢時間

うっすら張った氷や霜で滑りやすくなっていたり、霜柱が溶けて土がぬかるんでいたりすることも多いので、足回りはソールのしっかりした、防水透湿性のあるミドルカットの登山靴が快適です。脱いだ防寒具は多少かさばりますから、日帰りであってもザックは少し大きめ、25〜30L前後のものがよいでしょう。

冬枯れの山で「太陽の光」の力を感じる

冬の低山を歩いて感じるのは「太陽の光の心地よさ」です。
葉を落とした木々の上から降り注ぐやわらかな日ざしを受けて、身体がじんわりと温まっていきます。日が陰ってひんやりとした針葉樹の林を抜け、明るい広葉樹の林に出たときの陽光の輝き、あたたかさ。太陽の光ってありがたいなあ、気持ちいいなあ、と思いながら、山を歩けるのは、冬の低山ならではかもしれません。

天気のよい日を選んで、冬枯れの山に出掛けてみませんか。ゆっくりのんびり、周りの景色に足を止めながら歩けば、たくさんの「宝物」に出合えることでしょう。

やわらかな日ざしと落ち葉のたっぷり溜まった冬枯れの登山道

やわらかな日ざしと落ち葉のたっぷり溜まった冬枯れの登山道

冬登山のおすすめ装備・アイテム
PRIMUS 115フェムトストーブ

プリムス 115フェムトストーブ

休憩時にとる温かい飲み物は、心を和ませてくれます。直ぐに使うことのできる軽さと安定感のある小型こんろを忍ばせておくと良いと思います。

LOWA バルドGT(メンズ)

ローバー バルドGT(メンズ)

沢山の落ち葉に埋もれた登山道は柔らかくとても歩きやすいのですが、その下に隠れている岩や陽が上がった後にとけた霜柱でぬかるみがあったりします。足首周りまであるミッドカットモデルが安心です。冬のシーズンは革を使ったモデルが最適。

LAKEN クラシック・サーモ

ラーケン クラシック・サーモ

広口タイプの真空断熱ボトルです。歩行中のちょっとした休憩時に飲む温かい飲み物は、ほっこりした安らぎを与えてくれます。寒い冬でも、適宜水分補給は必要です。

Deuter トレイル24SL

ドイター トレイル24SL

歩いている最中の脱ぎ着での収納性の良さがあるジップオープンタイプのハイキングパック。大きめのマチ付きフロントパネルもあって小物の収納にも便利。

西野淑子

西野 淑子(にしの としこ)

関東近郊を中心に、低山ハイキングから縦走、雪山登山までオールラウンドに山を楽しむフリーライター。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)、「ゆる山歩き」(東京新聞)など。

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