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日帰り低山ハイキング・登山
〜山の緑に包まれる、新緑の低山歩き〜
写真・文 西野淑子(アウトドアライター)
5月に入り暑過ぎず、寒過ぎず、日照時間が長くなってきた新緑の季節は、低山ハイキングが心地よい季節です。春を待ちわびたかのように芽吹き、一気に葉を広げ、色を濃くしていく木々。日に日に色をかえていく樹林の中をゆっくり、のんびり時間をかけて楽しむ日帰りハイキングが楽しみな時期です。
日帰り低山ハイキング・登山の魅力
〜芽吹きの季節の山々は、さまざまな色の「緑」で彩られる〜
低い山では、春の訪れと共に木々の芽吹きが始まります。葉を落とした木々で寒々とした印象だった広葉樹の森は、細い枝から小さな芽が出て、葉を広げます。遠目に見る山の斜面も、針葉樹の濃い緑と木の幹の茶色に、淡い緑が混ざるようになります。
芽吹いた直後、なんとも弱々しく、頼りなげな姿の葉は、日が経つにつれて形がしっかりし、色も濃くなっていきます。少しでも多く陽の光を浴びようと葉が育っていき、森が緑で覆われていくのです。淡い緑色に染まる初夏の森では、鮮やかな朱色のヤマツツジや白のヤシオツツジ、明るい黄色のヤマブキの花などがよく目立ちます。とくにヤマツツジは群落を作っていることも多く、遠くからでも目を引きます。
広葉樹の林を歩くと、見られる木々は1種類でないことが分かります。
カエデ、サクラ、ツツジ、ブナ、コナラ、クヌギ。さまざまな樹木が混在しているのが、日本の雑木林です。樹木によって芽吹いたときの葉の色は異なり、同じ樹木でも日の当たり具合によって芽吹きの時期が少しずれたりします。そのため、山の緑は全部同じ色ではありません。淡い緑、濃い緑、やや赤みがかっていたり、黄色がかっていたりもします。遠くから芽吹きの時期の山を見ると、さまざまな緑でだんだら模様になっているようです。
日本には、色の名前がたくさんあります。笹色、山葵色、若葉色、浅緑、若緑、早苗色、萌黄、草柳、濡葉色…どれもみな「緑色」を示す名前です。微妙な色合いの違いで名前が異なっています。新緑の中を歩いていると、なぜ緑色を示す名前がこんなにもたくさんあるのか、その理由が分かる気がします。
奥多摩・三頭山のハイキング・登山が心地良い
〜若葉の間から差し込む木漏れ日が美しい、広葉樹の森を歩く〜
新緑の森を楽しむハイキングによく訪れるのは東京の西部、奥多摩・三頭山です。整備された登山道はとても歩きやすく、バスが発着する登山口から鞘口峠経由で山頂に向かうルートは、途中のブナの林が瑞々しく心地よいのです。三頭沢沿いのルートも沢のせせらぎが響く雑木林の中をのんびり歩ける好ルート。
山頂まで行くのはちょっときつそう…という方にも、このエリアはおすすめです。山頂に向かわずとも快適な森歩きが楽しめるよう、散策路が整備されています。登山口から、ウッドチップの敷かれたなだらかな道を歩いて三頭大滝に向かうだけでも心地よいです。吊り橋の上から滝を眺めると、ちょっとした達成感が味わえるかもしれません。
少し遠出になりますが、上高地もおすすめの場所です。
バスで上高地バスターミナルまで入れば、人気のスポット「河童橋」までは徒歩5分ほど。橋の上から眺める穂高連峰は、山好きでなくても心をわしづかみにされるような絶景です。上高地バスターミナルを起点に、明神池まで向かう梓川右岸/左岸歩道、大正池まで向かう自然研究路がそれぞれあり、樹林や湿原の散策を楽しむことができます。
汗ばむ季節、快適に日帰り低山ハイキング・登山をするポイントは衣服の調節と水分補給
日ざしも少しずつ強さを増している初夏の時期、とはいえ立ち止まるとまだまだ気温は低いですし風が吹けば寒さを感じるでしょう。日によって気温が大きく異なることもあり、この時期は汗をかきすぎないように注意することが大切です。たっぷり汗をかいて濡れてしまうと汗冷えの原因となりますので、「歩き始めはやや肌寒いくらい」の服装がちょうどいいと思います。しばらく歩いても寒くて辛いようなら、1枚羽織ればよいのです。
また、この時期は水分補給も意識したいものです。まだ身体が気温に慣れていないため、気温が上がるとすぐに汗を沢山かいてしまいます。逆に、汗をかいていないと思っても、案外に呼気などから水分は放出しています。ハイドレーションシステムなどを活用して、こまめに水分が摂れるように工夫をしたいものです。また、水分を入れるボトルをおしゃれなもの、かわいらしいものに替えて変化をつけるのも楽しいです。
のんびりロングルートを楽しむなら、ミドルカットの軽い登山靴がおすすめですが、高低差のあまりない、登山道のよく整備されたルートであれば、ローカットのハイキングシューズでさらに軽さ、快適さを意識してもよいでしょう。いずれにせよ、靴の中の蒸れを排出して足を快適に保てるよう、防水透湿性素材を使った靴を選びたいものです。
寒過ぎず、暑過ぎない季節ですから、山でゆっくり時間をとって山ご飯を楽しむのもおすすめです。軽く使い勝手のよいストーブやクッカーがあると、料理も楽しくなります。最近は山ご飯のレシピ本も多く出ていて、参考になります。今度山に行ったら何を作ろうか、本を見て、レシピを考えているだけでも楽しくなります。
のんびりと森の中を歩くのは気持ちがよいものです。
一面の緑、頭上からキラキラと差す木漏れ日、陽光に透ける葉の色、さわさわと風が木々を揺らす音、立ちのぼる森の匂い。森の気配に包まれて、身体の中が浄化されていくような感覚。エネルギーに満ちあふれた芽吹きの山は、歩くだけで力をもらえるような気がするのです。
ドイター フューチュラ32
背中の通気性が抜群に良く、背中の汗のかき方も大分違います。日中の寒暖差対策に1枚羽織るジャケットを入れたり、山ご飯の装備を入れたりもできる余裕を容量にみておきたい。
西野 淑子(にしの としこ)
関東近郊を中心に、低山ハイキングから縦走、雪山登山までオールラウンドに山を楽しむフリーライター。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。著書に「東京近郊ゆる登山」(実業之日本社)、「ゆる山歩き」(東京新聞)など。