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既存の製品にないプラスαにニーモの秀でた創造力を感じさせてくれる

ニーモ/リフ30

文:高橋庄太郎(山岳/アウトドアライター)

本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。

スリーピングバッグの進化は著しい。高品質の中綿が使われていて暖かく、それでいてコンパクトに収納できる……などということは当たり前で、今はさらなる“プラスα”によって、保温力や耐水性といった機能を強化するものが登場してきている。僕自身、これまでに20以上のスリーピングバッグを所有し、使い続けてきた古いモデルにも愛着はあるものの、実用性を考えれば実際に山中で使うものは機能性に秀でた新製品ばかりになってしまう。

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僕が今回テストしたニーモの「リフ30」も、特筆すべき“プラスα”の機能がいくつも加えられているモデルだ。

はじめに基本的なスペックを確認しておこう。

リフ30の保温力はいわゆる“下限温度域”が-2℃。一般的な男性が寒さを感じずに眠れる温度である。中綿には800フィルパワーの撥水加工済ダウンが280g使われており、表地/裏地、ファスナーなどの重量を加えた最小重量は825gだ。なお、リフ30の「30」は華氏で30℉を表しており、それを摂氏にすれば下限温度域の-2℃程度となる。また、下限温度域を-9℃に設定したリフ15もあり、それに加えてリフ30、リフ15ともに長さを抑え、防寒対策で中綿量を増やした女性用モデルも用意されている。

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リフ30はそのフォルムもユニークだ。ニーモが独自開発した“スプーンシェイプ”なる形状で、腰回りをシェイプしつつ、腕と膝という四肢の関節部分に余裕を持たせているのがおもしろい。とくに頭部から腕周りは丸みを帯びたスプーン状の形状というわけだ。実際に内部に入って寝転んでみると、寝返りを打った際に肘や膝を動かしても圧迫感を覚えず、生地が引き攣れて生まれる狭苦しさも感じない。

このような基本スペックを踏まえ、ここからはリフ30が持っているいくつもの機能をチェックしていく。キーワードは「耐水性の高さ」「就寝時の温度を調整する工夫」「使いやすいディテール」の3つだ。

チェック1:耐水性の高さ

先に述べたように、リフ30の中綿は800フィルパワーの撥水加工済ダウン。しかも環境に配慮したRDS認証、PFCフリーで加工されている。内部に封入されたダウンを取り出して確認することはできないが、水濡れに強い中綿であることは間違いなさそうだ。

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表地と裏地はどちらも耐久撥水加工を施されたナイロン製の生地で、さらに頭部と足元には防水透湿性の40DナイロンRS OSMOという素材が使われている。つまり表面生地には機能が異なる2つの生地を使っていることになる。

山中のテントは内側に結露が生じやすく、テントに接触したスリーピングバッグを濡らす大きな原因になっている。とくにテントの生地に触れやすい頭部と足元が弱点だが、リフ30はその弱点部分を補うように防水透湿素材を使っているのである。

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湿気が多く、寒暖差が激しい夜は結露が多い。僕はスリーピングバッグが濡れるのを避けるように、頭部をレインウェアで覆ったり、足先だけバックパックカバーをかけたりして眠ることもある。悪天候が予想されるときは、スリーピングバッグカバーを持参することもある。だがリフ30のような工夫が加えられていれば、それらの出番は激減する。このテストの夜も結露はかなりひどかったが、朝になってもスリーピングバッグ内部に浸水した形跡は見られなかった。

ただ、注意したいのは、耐久撥水性であれ、防水透湿性であれ、リフ30の表地はレインウェアと違って縫い目まで処理されているわけではない。表面に水をたっぷりと垂らしてみると、縫い目から少しずつ浸透していくのがわかる。

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もちろん内部は撥水加工済ダウンなので、水が少々浸透しても保温力はキープされている。とはいえ、スリーピングバッグのコンディションを良好に保つためにはできるだけ濡らさないほうがいいことは言うまでもない。いくら水濡れに強いモデルであっても、過度に結露や雨水に濡らすことは避けておくのが無難だ。

いずれにせよ、「撥水加工済ダウン×耐久撥水性&防水透湿性素材」というリフ30の耐水性の高さはすばらしい。結露が増える蒸し暑い時期や雨が多い時期でも安心して使えるはずである。

チェック2:体感温度を調整する工夫

ニーモのスリーピングバッグには、デザイン上のポイントにもなっている大きな特徴がある。すなわち「サーモギル」だ。

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これは正面につけられた2本のジッパーで開閉する“温度調節用”の細長い窓のような部分だ。閉じていれば一般的なスリーピングバッグと変わらないが、開けば熱を排出するベンチレーターのような役割を果たし、スリーピングバッグの“保温力を下げる”働きを持つ。スリーピングバッグといえば、保温力を高める機能ばかりに目が行きがちだが、実際の山中では暑苦しくて眠れないことも多い。そんなときに活躍する工夫が、このサーモギルなのである。

以下の写真は、サーモギルを広げ、スリーピングバッグ内からその部分を撮影したものだ。

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中央に位置するサーモギルの部分は向こう側の光が透けて見える。サーモギルの部分にはダウンがほとんどなく、表地と裏地がほぼダイレクトに接しているわけで、この部分から無用な熱が排出されるという機能がイメージできるに違いない。

僕は以前にもニーモのスリーピングバッグをテストしたことがあるが、今回は以下の写真のように左右の一方を広げ、もう一方を閉じて体感温度の差を確認する……なんとことも試してみた。

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だが正直なところ、こういうことをしてみても左右での温度の差まではよくわからないというのが正直なところだ。サーモギルを開いても外気に直接触れるわけではないので、スリーピングバッグ内部に極端な温度差は生まれないのである。

それに対し、両方とも閉めているときと、両方とも開いているときでは、たしかにスリーピングバッグの保温力は異なっているように思われる。先の写真のようにサーモギルを開いていると光があれだけ透けるほど“ダウンがない”部分が生まれるのだから、当たり前といえば当たり前だ。

ただし、サーモギルを効果的に利用するにはコツが必要そうである。というのも、就寝中に暑苦しさを感じ、それからサーモギルを開けても、瞬間的にスリーピングバッグ内部の温度が下がるわけではないからである。

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僕が考えるサーモギルを効果的に使う方法は、暑苦しそうな夜はあらかじめサーモギルを開いてから眠るということ。そうすれば過度にスリーピングバッグ内部が暑くなることはない。もしも寒さを感じたときは、就寝中にサーモギルを閉める。要するに、暑さを感じてからサーモギルを開くような使い方はあまり効果がないが、就寝前に開いておくと涼しく眠れるということなのである。

ニーモのスリーピングバッグのもうひとつの特徴は「ブランケットフォールド」だ。これはスリーピングバッグの首もとにつけられているマフラー状のパーツである。

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ブランケットフォールドは、暑いときは外に露出させて使用しなければ首元が広がり、熱気を逃がすことができる。しかし寒いときは内側に引き込んで首元に巻き付けることで、内部の暖気と外部の冷気を遮断できるというおもしろい工夫だ。

僕はこのブランケットフォールを非常に気に入っている。

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スリーピングバッグの温度調整の効果は、おそらくサーモギル以上だ。また、ブランケットフォールドの部分にもダウンが封入されており、首にあたるナイロン生地もじつに柔らかであり、首元に巻き付けるのがじつに気持ちいい! ブランケットフォールドを首に巻いてリフ30のなかに寝転んでいると、まるで自宅のベッドで羽毛布団に包まれているかのような気分になる。この気持ちよさ、ぜひ多くの人に味わっていただきたい。

チェック3:使いやすいディテール

リフ30には寝心地をアップするための工夫がいくつも搭載されている。それも見えない部分にプラスされているから心憎い。

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例えば、フード部分の内側には、枕を収めるための大きなスリット(ポケット)が設けられている。これによって就寝中に枕がズレることがなく、いつも頭の下に位置するようになり、就寝を妨げられない。サイズが適合する同社のマクラとはもっとも相性がよいが、他社の枕も入れることができ、枕ではなく畳んだウェア類などを押し込んでもいい。布一枚で作られたシンプルな工夫だが、なかなか効果的であることを実感した。

リフ30のサイドは足元近くまでジッパーが付き、大きく開閉できる。また、頭と足の両側に引き手が付いているので、気温や使い方に合わせて開け方は自在に変えられる。

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就寝中に暑苦しさを感じたら、足元だけを開いてもいい。外気が内部へ直接入り込み、即効で内部の温度を下げられる。より暑い場合は冒頭の写真のように、サイドを完全に開け広げ、そのまま体の上にかけて使うのもお勧めだ。

このジッパーは、生地の噛みこみを防止する特殊タイプである。その効果は驚くほど。今回のテストでは高速で何度もジッパーを上げ下げしてみたが、一度も噛み込むことがなかったのには驚いた。

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僕はこれまでに生地へ噛み込んだジッパーを外そうとして、所有していたスリーピングバッグのいくつかに小穴を空けてしまったことがある。しかし、このファスナーであれば、心配はない。真っ暗なときに手探りでジッパーを開閉するのも安心なのであった。

最後に収納状況をお見せしよう。リフ30にはコンプレッションタイプのスタッフバッグが付属しており、収納時は29×19㎝になる。しかし、このスタッフバッグはかなり余裕を持った大きさになっており、その気になればもっとコンパクトに収められる。つまり、下の写真よりも一回り小さく収納できると考えてよい。

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このサイズのスタッフバッグを採用しているのは、あまりに小さく圧縮すると内部のダウンがつぶれ、傷んでしまうことを避けるための配慮なのかもしれない。だがバックパックへ収納するときにもっとコンパクトになったほうがいいと思われる方は、より小さめのコンプレッションバッグへ入れ替えるのもひとつの手である。

ギミックな機能が活躍の場を広げてくれるリフ30

「耐水性の高さ」「体感温度を調整する工夫」「使いやすいディテール」という3つのキーワードに象徴される、ニーモのリフ30。完成度の高さを感じさせるスリーピングバッグで、結露や雨が多い日でも濡れをあまり気にしないで使用できるのは本当にありがたい。スリーピングバッグカバーを持たなくていいのは、荷物の軽量化にもつながるだろう。
個人的にはサーモギルやブランケットフォールド、そしてサイドのジッパーで、細かに温度調整できるのが、なんといってもうれしいことであった。これひとつあれば、春から夏、秋までの季節には対応でき、それよりも寒い時期にはリフ15という選択肢も用意されている。応用度の高いスリーピングバッグとして、多くの山で気持ちよく眠れそうだ。

高橋 庄太郎高橋 庄太郎(たかはし・しょうたろう)
「出版社勤務後、山岳/アウトドアライターに転進。さまざまな登山スタイルを楽しみつつも、もっとも愛するのはテント泊縦走で、好きな山域は北アルプス。著書に『テント泊登山の基本テクニック』(山と渓谷社)、『山道具 選び方、使い方』(枻出版社)、『“無人地帯の遊び方』(グラフィック社)など多数あり、最近はテレビやイベントへの出演も多い」

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