アルコールストーブの火力を最大限に活かすためのコンパクト・クックセット

トランギア・ストームクッカー

文・蓑和田一洋

本ページの内容はインプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
 この数年、アルコールストーブが注目されている。いくつかの登山用具専門店を見たところ、アルコールストーブが主役クラスの位置に並べられているところもあった。日本では長い間、広く認知されてこなかったギアだが、小型軽量化のブームに乗ったのだろうか、とにかく人気が高い。
 理由はどうあれ日本では21世紀になってから登場したかのようなストーブだが、実はヨーロッパでは昔からキャンプ場で普通に使われているごく一般的なストーブである。そこには小型とか軽量とかの特別なイメージはなく、ただその使いやすさからアルコールストーブは存在している。
 さて、このアルコールストーブの代表ブランドがトランギアだ。トランギアは工業の国、スウェーデンにあり、創業は1925年。半世紀以上にわたりアルコールストーブやアウトドア用のナベ(ソースパン、クッカー)を作っている。そして、アルコールストーブといえばだれもがトランギアに一目を置くほど、その信頼は高い。
 なぜアルコールストーブはトランギアなのか。この点を考えながら実際に使ってみた。

ガスストーブと互角のシンプル着火 調理も問題なし

ストームクッカーは、アルコールバーナー、スタンドベース、ゴトクをかねた風防、ソースパンが2個、フライパン、アルミハンドルがセットになっている。これらをひとつに収納できるから、持ち運びに便利。写真はストームクッカーL・ULハードアノダイズド

炒めたり、バスタを茹でたりするのに十分な火力がある
 ストームクッカーのシリーズは、アルコールバーナー、スタンドベース、ゴトクをかねた風防、そしてナベ(ソースパンが2つ、フライパン)で構成されている。スタンドベースから空気を取り入れ、バーナーの熱気を効率よくナベに伝える構造だ。
 日本でアルコールストーブといえば小型のアルコールバーナー単体と小型ゴトクをセットにしたものがよく紹介されるが、本家ヨーロッパではこのストームクッカーのようにスタンドベースや風防とセットにして使うのが普通。その理由は単純で、燃焼効率が高く、もっとも調理しやすいからだ。
 ストームクッカーの使い方を確認しよう。まずスタンドベースに風防をセットして、燃料(アルコール)を入れたアルコールバーナーを置く。あとはライター、マッチでアルコールに着火すればよい。火を消すときは、消火フタをかぶせる。
 使用時のポイントは、必ずスタンドベースにある穴を風上側に向けること。こうすることで燃焼に必要な空気(酸素)を効率よく取り込むことができる。
 火力は「意外」と感じるほど強い。肉を炒めたり、水を沸かしたり、パスタを茹でたり、米を炊くのに十分な火力だ。

ストームクッカーの使い方

1、スタンドベースに風防をセットする 2、燃料を入れたアルコールバーナーを風防の中にセットする 3、ライターかマッチでアルコールに着火する。炎が見えにくいので注意
 
4、消火フタをかぶせて火を消す。使用中は風防などの本体、バーナーも熱くなっているから手袋を使うこと  

使い方のポイント

スタンドベースにある穴を風上に向けることで、燃焼効率を高めることができる ソースパンを使うとき、フライパンをフタにすることで熱を効率よく使うことができる

消火フタにあるリングを使って火力を調節することも可能だ

使用時の注意点

燃料は専用ボトルに入れて運ぶようにしよう。
(写真はトランギア フューエルボトル・0.5リットル)
 使い方はシンプルだが、アルコールストーブならではの注意点がある。まとめておこう。
1.バーナー本体、それにスタンドベースや風防も熱くなる。ヤケドを防ぐため、綿製の手袋(軍手)や革手袋を使うこと。また、木のテーブルや樹脂の上など燃えやすいものや溶けやすい物の上やまわりでは使わないこと。
2.アルコールは明るい場所だと着火していても炎がみえにくい。また、燃焼音もない。そのため、燃焼していないように見えても、火が着いているときがある。着火、消火の確認は慎重に。
3.野外での使用のみ可能。テント内、車内では使えない。
4.燃料はアルコールのみ使うこと。ガソリンなどは使用できない。
5.アルコールは専用ボトルに入れて持ち運ぶ。バーナー内に入れたままだと漏れることがある。
6.調理中にアルコールを補給するときは、一度、炎を完全に消してから行う。

すぐれた収納性と高い完成度

 さらに、ストームクッカーには別売のケトルやマルチディスクとの組み合わせも可能だ。ストームクッカーLだと0.9リットルのケトルマルチディスク21cmもまとめて収納できる。
 ケトルを収納するときはフタを裏返すのがコツ。マルチディスクはマナ板、パスタなどの湯きり、フタなどマルチに活躍。収納時はフライパンにぴったりと収まり、フライパンのキズ防止にも役立つ。
 また、洗練された仕上がりも特徴だ。たとえばアルコールバーナーは真鍮製で長年の使用にも耐えるものとなっている。炎の噴出し口の穴も均等にならび、これが美しい炎を生み出す。この高い完成度は、長い歴史から生み出したノウハウとスウェーデンでの生産にこだわりつづけるトランギアだからこそ。
別売のケトルやマルチディスクを組み合わせて、収納することができる 真鍮製のアルコールバーナー。仕上がりの美しさが高品質の証


マルチディスクは、まな板、水切り、収納時のフライパンのキズ防止、ナベのフタ(調理中は使えない)など多彩な使い方がある

故障知らずで、強風、低温でも問題なし

 着火方法は単純。プレヒートの必要がない、いわゆる「一発着火」という点ではガスストーブと互角である。構造も単純だからほぼメンテナンスフリー。
 また、ガスストーブが苦手とする強風時や低温下でも安定した炎を得ることができるのも特徴。アルコールの炎そのものが風でも消えにくく、さらにストームクッカーには風防がついているから、本体が風で飛ばされない限りどんな強風下でもお湯を作ることができる。低温にも強く、マイナス20度でもマッチを使えば「一発着火」だ。さらに気温が低いときは別売のプリヒーター(TR-FV21)を使おう。
 そして、燃料の入手が容易である。燃料用アルコールは国内ではドラッグストアで買うことができるし、世界各地でも安値で入手しやすい燃料だ。
 欠点は火力で、ガスストーブと比べてパワーが弱いのは事実。しかし、先にあげたとおり調理するのに十分なパワーがある。特別に強力な火力を必要とするレシピや、時間をいそがなければ問題ない。もうひとつの問題は、1回のアルコール使用量約100ccでの燃焼時間が約25分であること。燃焼音もないから、気づかないうちに燃料が尽きていることがある。以上の弱点が気にならない人であれば、ストームクッカーの魅力は大きいはず。
 最後に静かな声で自慢したいのが安価なこと。ガスストーブとアウトドア用のナベを買いそろえることを考えれば、ずっと安い計算だ。安価なのに品質は高いから、多少の手荒な扱いでも10年、20年は使いつづけることができる。そして、キャンプ場での存在感も高い。ずばり、お買い得である。

執筆・取材 蓑和田一洋(みのわだ・かずひろ) 
1969年生まれ。山岳ライター、編集者。登山専門誌『山と渓谷』、『ROCK&SNOW』、『PEAKS』などで活躍。東京在住。