文:北村俊之(国際山岳ガイド)
本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
ドイターのスピードライトは、ドイターの中でもとりわけ軽量化を追求したモデルである。しかし、このスピードライトのシリーズは、エクスペディションやスピードハイクなど、グラム単位での軽量性を求められる山行だけでは無く、日常の山歩きでも快適に使用できる性能を持っている。四季を通じて使えるマルチパーパスパックと言えるだろう。
軽量化を図るため、バックルを小型にするなどの工夫がなされているが、背面部の剛性が高く、ショルダーベルトは非常にしっかりした作りで、バックパックの基本を支える部分については、長く使っていてもヘタってこない。
一般的に軽量化を追求したバックパックは、背面部のパッドを抜いて剛性を犠牲にしたり、ショルダーベルトも幅広のテープの様な柔らかい物を採用したりする傾向にあるが、それは行動中もダウンジャケット等の分厚い衣類を着込んでいたり、パッキングをかなり工夫する事が使用の前提条件になる。通常の夏山の服装でその様なパックを使用していると、ショルダーベルトが肩に食い込んで痛くなるし、背面の剛性が無いと長時間の歩行では疲労感が増してしまうと思う。
私は夏山だけでは無く、荷物の増えるバックカントリースキーツアーや、積雪期の登山でもスピードライト32を使用しているが、32ℓの容量に装備を外付けできる伸縮性のあるポケット、バーサスタイルコンプレッションストラップなどのシステムにより、ストレス無く荷物をパッキングできる。
またそれらのフル装備をパッキングして長時間歩いていても、肩の痛みも無く、荷重が背面全体に上手く分散されるので、疲労が軽減されていると思う。
つい先日は頂上から太平洋が見える沿岸部の山のハイクに使用してみたが、登山口付近は晩秋の趣なのに対し、稜線に出ると凍った積雪が岩に張り付き、海からの強風がいきなり吹き付けるなかなか厳しい条件だった。この様な時も、予めフロントパネルに収納していたハードシェルジャケットをさっと着込めるし、カメラの三脚の出し入れもストレッチメッシュのサイドポケットとサイドストラップを利用して一瞬で終わり、身体を冷やすことなく直ぐに次の行動に移れるのがありがたかった。
まさに行動全体の「スピード」を高めてくれる、使い易いバックパックだと思った。