文:今雄飛(スポーツライター)
本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
このバックパックを使うまで自転車では「容量が大きいものを使う」、若しくは「使わない(背負わない)」の2択かと思っていた。
自転車に乗るときには、基本的にサイクルジャージについているバックポケットを使用するのが一番気軽で快適だし、もし荷物が多くなってバックパックを背負う必要があるなら大は小を兼ねるで、大きめのものを背負っていた。ドイターのパックなら、少し大きめでも背負いやすく背中も蒸れない。特に不自由は感じていなかった。
しかしこのレース8。容量は8リットルと数字上はなんとも物足りない感じだが、使ってみたら実はかなり絶妙なサイズだった。
『レース』という名前にもあるように、これは基本的にレースやロングライドに使用するバックパック。ウインドジャケットや補給食など8リットルに収まるものを入れて、"走る"ことをメインとしたときに使用するものといえる。ヒルクライムレースなどでのレギュレーション装備を入れるパックとしても使えるだろう。実際に使ってみると背負い心地も軽く、かなり走りやすい。
容量は8リットルのため、荷物をパンパンに入れてもそれほど重くはならないが、背負いやすさはさすがドイターといったところ。ほかのドイターの自転車用パックと同様に背中に乗る、感覚としては「肩甲骨付近に乗る」ため、ライディング中に肩に重さがのしかかることなく走りに影響がない。
容量は少なめとは言うものの、輪行に使用するには十分。ジャケットやシューズ、ヘルメットなどを収納しても、まだすき間がある。持っていく荷物を吟味すれば、1泊くらいの輪行ならいけるかもしれない。
バックパックの両サイドにはポケットを装備。別売のヘルメットホルダーを取り付けるためのループを備えている。
アイウェア用のホルダーがついているところもうれしい。ホルダーに取り付けておけば、置き忘れる心配も少なくなる。このようにバッグ内に荷物を入れなくてもいろいろなものが保持できるので、容量の数字以上の収納力があると感じた。
タテの寸法が43cmとタテ方向にもコンパクト。背負いながらサイクルジャージのバックポケットにアクセスもできるため、持ち運べる"全体の荷物"を増やせるところもポイント。サイクルジャージのバックポケットはだいたい3リットルくらいの容量があるので、バックパックの8リットルと合わせれば1日のロングライドやレース、輪行などには十分といえるだろう。
バックパック上部にはアクセスしやすい小物入れ付き。スマホやコンパクトカメラなど、頻繁に取り出すものを収納しておける。
メインの荷室にもジップ付きの小物入れがあるので、補給食などを整理して持ち歩くことができる。一見シンプルなつくりに見えるが、細かいところに収納があり"気が利いているな"と感心させられる。
底部にはレインカバーの収納ポケットがあり、レインカバーが搭載済み。突然天候が変化してもバックパック内の荷物を濡らすことを防げるし、ネオンイエローなので視界が悪い中でも安全性を確保できる。
ドイター独自の背面システムはもちろん搭載。縦方向に2本のクッションが備えられているエアストライプシステムは、背中の接触面を抑えて通気性をもたらしてくれる。背負って走ると中央のくぼみから熱気が逃げていくのが感じられる。
肉抜き加工が施されたショルダーストラップは、走ると肩周りに風を感じるほど通気性が高い。一見頼りなさげに見えるが「背中に乗る設計」のため、ストラップが肩に食いこむようなことはなく特に問題ない。またフォームにコシがあって型崩れしないので、しっかりとした背負い心地があった。サイクリング以外にも半日ぐらいのハイキングなら問題ないかもしれない。
自転車は特に背中が蒸れるスポーツ。でもエアストライプシステムの通気性によって、背中への接触が極力おさえられているので、たとえ汗をかいたとしても汗でべたつくことがなかった。
ジャケット、パンツ、ソックス、タブレットは問題なく収納できる。さすがにビジネスシューズまでは持ち歩けないが、使える荷物を取捨選択すれば、自転車通勤にも使用できるだろう。
本来はハイドレーションバッグが入るスリーブなのだが、普段モバイル用として使っているサーフェスPROならラクに収納可能。
この8リットルという容量がかなり絶妙。持っていくものを絞る必要はあるが、「これに入るくらいの荷物が最適な量」と感じさせられた。背負ったとしても軽快に走ることができ不足を感じない量、なんでもかんでもバックパックに入れずに厳選することで、自転車ライドに必要なものが明確になった。
本当に必要なもの、自転車で持ち歩くものを正しく選択できるバックパックかもしれない。