文:岩本さやか(スノーボードガイド)
本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
岐阜県の飛騨高山を拠点に、夏は登山ガイド、冬はスノーボードガイドとして活動しています。
里山からアルパインまで色々な場所で滑っていますが、ガイドツアーでもプライベートでも、いちばんよく行くのは奥飛騨エリアの里山です。休みの日は地形図とGPSを片手にガイド仲間と冒険BCに出かけます。
立山や白川郷を越えて降る奥飛騨の雪は極上のドライパウダーで、一度滑るととりこになります。奥美濃や白馬などに比べるとツリーランはタイトだし、細い木と木の間をすり抜けるようなヤブー(薮)ランも多いのですが、うまく滑れるとかなりの達成感があります。
もちろんノートラックのオープンバーンも大好きで、たくさん雪が降ってコンディションが良いときはゲレンデも滑ります。飛騨エリアのスキー場はどこへ行っても人が少なく、リフト待ちはゼロ。行く時はひとりでも、いつの間にかローカル仲間と滑っていることが多いです。飛騨っ子ならではの、ゆるくてのんびりした雰囲気も気に入っています。
バックカントリーに行くときは、ドイターのフリースケーププロ38+SLを使っています。バックパックは十分な容量があって必要な装備を収納できることが大切ですが、滑りで使うパックは、とくに背負い心地が重要だと考えています。
横向きに乗るスノーボードは、つま先の方に回るフロントサイドターンと、かかとの方に回るバックサイドターンがありますが、フィット感の悪いパックを背負っているとターンの遠心力でパックが振られ、つられて体も振られてしまいます。フロントサイドターンでは前に押されるような、バックサイドターンでは後ろに引かれるような力がかかり、ガイド装備のような重い荷物を背負っていると倒れてしまうこともありました。
その点、フリースケーププロとても優秀です。シュッと縦長で、背中にぎゅっと密着するようなフィット感があり、ターンのときに振り回される感じがありません。以前に背負っていたパックもフィット感はいいと思っていましたが、フリースケーププロを背負ってみて、その違いに驚きました。
雪山ではスピーディな行動が安全につながります。寒くて風が強い環境下でも素早く動けることが大切です。ふだんはスプリットボードを使っていますが、ハイクから滑走へのモードチェンジがスキーやソリッドボードに比べてひと手間多いスプリットボードでも、さっと動けるよう心がけています。フリースケーププロのディテールは、そうしたひとつひとつの動きもよく考えてつくられていると感じています。
背面アクセスはほとんどのスノーパックが備えていますが、フリースケーププロは開口部が大きく、開きやすいのでとても便利です。中のものが一目で把握でき、ほしいものがすぐ手に取れるので緊急時にもスムーズに対応できそうです。その一方で、余分なポケットなどがついていないことも好印象です。これは本体の軽さや背負い心地にもつながっています。
ハイクする間、トップリッドにはゴーグルとヘルメットの下に被るビーニーを入れておきます。容量が大きいのでゆとりがあり、モードチェンジのときも迷わずに取り出せます。
本体はプラス10Lの容量アップが可能ですが、お客さまの荷物を持つことがまれにあるので、そのときのために空けておきます。その場合は、お客さまには空のパックを背負っていただきます。万一のとき背骨や脊椎を守るためです。収納式のヘルメットホルダーも便利に使っていますが、空きスペースが多い場合はヘルメットもパックに収納してしまいます。
38Lという本体容量は、ロープやカラビナ、スリングのようなガイド装備を含めるとワンデイでもちょうどいい大きさです。ガイド装備を持たなければ二泊程度の山小屋泊も十分にこなせるサイズ感でしょう。
最後に個人的な感想を。38+SLは女性用という位置付けですが、中性的なカラーも気に入っています。きれいなグレーは仲間やお客さまの評判も良く、「いいね」と言われると自分が褒められたかのように鼻高々です。これから本格的になる春のツアーシーズンを、このパックとともに楽しみたいと思います。
装備の一例:1デイBCガイドツアーのとき
ツエルト、ロープ、カラビナ、スリング、防寒具、グローブ(4種類)、ポット(お湯)、飲み物、行動食、非常食、非常時キットセット、ファーストエイド、サングラス、ゴーグル、プローブ、ショベル、スノーソー、ヘルメット、日焼け止め、スクレーパー、小型ドライバーレンチ + 登攀用具(板・シール・スキークランポン・ストック)寒がりなのでグローブは多めにしています。