文:髙木律子(登山ガイド)
本ページの内容は商品インプレッション記事のため、使用者個人の感想を含んでおります。
最近新調したのがローバーのバディアGTです。それまでは同じローバーの別のモデルを履いていましたが、だいぶくたびれてきたので同じように柔らかく歩きやすそうなモデルを、と考えて選びました。
バディアGTは革を使ったしっかりした作りの靴ですが、ソールもアッパーも柔らかめに仕上げられています。初めて履いたときに、とても足入れがしやすい靴だと思いました。
登山用品専門店のスタッフさんに聞いたところ、バディアGTにはこれまでとは異なる足型が使われていて、やや大きく感じられるそうです。スタッフさんの勧めもあり、試し履きをしたうえで、いつものローバーよりハーフサイズ小さいものを選びました。余談になりますが、登山靴を選ぶ際は必ず試し履きをして、ご自身の足でサイズを確認してから購入しましょう。同じメーカーで同じサイズを選んでも、こんなふうにモデルによってフィット感が異なることがあります。
こうして選んだバディアGTは、私の足の形にはよく合っているようです。これまで履いていたモデルも足に合っていると思っていましたが、ワイドラストを使って足幅にゆとりをもたせたそのモデルよりも、バディアGTは、よりフィット感が高い。足全体が包み込まれるような感じです。足首が少し高めに作られているおかげでホールド感があり、足首回りのサポート力も感じられます。
さっそく足慣らしに出かけます。ローバーの靴はどれも足入れしやすいのですが、金属のボールを内蔵したローラー・アイレットがあると靴紐の滑りもよく、すばやく締め込めます。さらにタングにはX・レーシングという突起があり、この突起にX字型に靴紐をかけることでタングが足の中央からずれないように固定できます。長時間歩いてもフィット感を損なわないようにする工夫ですが、足首のところでしっかり締められるような感じが気に入っています。
おろしたてのバディアGTで白馬山麓の「木流川(きながしがわ)遊歩道」を歩いてみました。水音が耳に心地よい川沿いのコース。アップダウンはほとんどなく、地元の方々がよく手入れをして下さっていて、山岳展望と森林浴の両方が楽しめる場所です。
平坦な道で硬めの登山靴を履いていると足が疲れてくることがありますが、バディアGTで木流川遊歩道を歩いてみると、とても快適。靴底の適度なたわみと爪先部分のしなりのおかげで、心地よいハイキングをすることができました。硬めの登山靴が苦手とする木道歩きもこれなら大丈夫そうです。
山岳地域では、これまで白馬岳や北八ヶ岳の登山で使っています。岩場では靴底のコンタクトゾーンのおかげで小さな突起にも足をかけやすく、グリップ力も十分にあるので靴を信頼して足を運ぶことができました。白馬岳では白馬大雪渓も歩きましたが、固く締まった夏場の雪上でも靴が負けることなく、表面を蹴り込んで歩くことができました。
足首が高いのでホールド感はありますが、アッパーは柔らかいので足の動きが制限されるようなストレスはありません。ストレスがない分、長時間歩いても疲れを感じにくいと思います。ソールやアッパーが柔らかめというとハイキング向けのような印象を持たれるかもしれませんが、適度にしなりつつも剛性はあるので、稜線までこれで十分いけると感じています。ハイキングから岩場までオールラウンドに使えるモデルです。私は、気に入った登山靴があると買い替えのときにリピートすることがあります。履き始めてまだひと月半にしかなりませんが、バディアGTもそんな一足になる予感がしています。